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福祉国家型教育財政と教育条件整備行政組織

―その理論と法制に関する歴史的研究―


宮澤孝子(著)
本体価格:3000円
発刊年月:2023/10
ISBN:9784871687027
Cコード:3073
管理番号:10112

「教育は権利として保障されているにもかかわらず、保護者や学生が直接負担するお金は多すぎるし、学校や先生に必要な予算は少なすぎる。」
本研究の原点は、この、実に単純な問いにある。

本来、教育はお金で買うものではなく、私たちの“ 権利” として保障されているはずである。それにもかかわらず、現実においては、教育という“ 商品” を購入できる資力の有無が、それを手にする資格の有無を決定する。なぜ日本は、教育が商品になってしまったのか?いつからそうなったのか?

本書は、米国において生成された福祉国家的特徴を有する教育財政の理論及び制度が、日本に受容され、展開し、そして、衰退していく過程を明らかにすることにある。戦後教育財政改革に関する先行研究においては、研究対象の時期と国が、戦後と日本に限定されてきたが、本書ではこれを、時期的には戦前戦後、地理的には日米両国に研究対象を拡大し、新たに、福祉国家型教育財政を実現するための教育行政として「教育条件整備行政組織」の存在を措定し、これらのあり方を歴史的観点から検討する。

本書「序章」「あとがき」より

 

目次

序 章
1 本研究の背景
2 先行研究と本書の位置
3 本書の目的と研究方法
4 本書の構成
第Ⅰ部 福祉国家型教育財政の萌芽と受容
第1章 20世紀初頭の日米における福祉国家型教育財政の萌芽
はじめに
1 1920年代米国における教育の機会均等理論と標準教育費プログラムの確立
2 1920年代米国教育財政の日本への適用の試み-阿部重孝の教育財政研究-
3 戦前日本における教育財政移転制度の受容とその限界…
小結 福祉国家型教育財政制度の萌芽
第2章 対日占領教育政策構想と戦後教育財政改革−シャウプ勧告前−
はじめに
1 占領初期の日本占領の構造と対日占領教育政策策定の過程
2 GHQ/SCAP、CIEの組織と人
3 モーガン文書からみる教育財政関連法案の構想
4 対日占領教育財政改革におけるCIEの立場
小結 特殊な条件下におかれた戦後教育財政改革
第3章 米国教育財政制度の受容過程−シャウプ勧告後−
はじめに
1 文部省及び教育刷新審議会による教育財政問題の検討
2 標準義務教育費法案の起案と廃案
3 第5期・第6期IFELによる教育財政講習の展開
小結 戦後教育改革期における教育財政改革の到達点
第Ⅱ部 福祉国家型教育財政を支える教育条件整備行政
第4章 福祉国家型教育財政を担う教育条件整備行政の生成、展開、そして衰退
はじめに
1 教育条件整備行政組織成立の背景としての統計
2 中央教育行政における教育条件整備行政の確立
3 地方教育行政における教育条件整備行政の確立
4 教育条件整備行政組織の衰退
小結 教育条件整備行政における調査研究部局設置の意義
第5章 教育条件整備行政の所掌事務としての教育調査
はじめに
1 教育の外的事項を対象とする教育条件整備行政…
2 教育の内的事項を対象とする教育条件整備行政
小結 教育条件整備行政たる条件としての調査研究組織の設置
第6章 内外事項区分論からみた教育調査とその意義
はじめに
1 内外事項区分論と混合事項との次元差
2 教育調査の次元媒介的役割−国民の知る権利と教育行政の専門性の保障−
終 章
1 福祉国家型教育財政と教育条件整備行政の歴史的展開とその特徴
2 本書の学術的意義
3 本書に残された課題
あとがき
引用・参考文献・資料一覧
索引